ゲスト:倉橋寛之さん(イラストレーター/ディレクター)
インタビュー:さとう大作/場所:角高/2004.02.21


今回のゲスト
イラストレーターで
アートディレクターの
倉橋寛之さん

撮影:Uさん

だいさく(以下大):新企画の「めにからカフェ第2回目」は、イラストレーターでありアートディレクター、仮面の下に隠れたその姿はしがない中間管理職、今最高に忙しいアーティスト、メニカラNO.17番、倉橋寛之さんです。今日はお忙しい中ありがとうございます。よろしくお願いします。

倉橋寛之(以下倉):よろしくお願いします。

大:職務経歴を教えて下さい。
倉:現在アートディレクターとしてデザインプロダクションに勤務しています。今の会社で3社目。専門学校を卒業後、札幌でデザイナーとして7年勤務しました。イラストも描くのでデザイン業務だけでなくイラストレーターも兼ねて仕事をしていました。その後1年ほど別のプロダクションに勤務して、現在の会社に席を置いています。転職の合間に短い時間フリーランスでイラストの仕事をしていた時期もありました。現在31歳です。

大:絵を描き始めたのは、いつ頃からですか?
倉:小学校の低学年の頃が一番絵を描いていたと思います。とても内向的な子だったから、とにかく家にいて絵を描いていました、テレビをみながら仮面ライダーやウルトラマンに出てくる怪人や怪獣をテレビが終わるまでに描き上げたりしながら遊んでるうちに、いつのまにか落書きがものすごくたまっていましたね。だから子供の頃は同年代の友達や、町内の中でもオレはかなり絵が上手方だと思い始めていました。中・高校生の頃は、運動することの方が面白くて絵を描けるということを人には言ってなかったですね。学園祭とかも手伝った記憶がないです。本当にひた隠しにしていました。だって普段は改造制服とか着ているのに絵を描いてみたらウマイ!っていうギャップはかなり恥ずかしく感じていましたね。高校3年生くらいになって卒業後、専門学校に入ると決めた頃、美術の時間に来ていた講師の先生が、自分で個展とかをする活動的な先生で絵の描き方の基礎みたいなものを放課後教わったりしていましたね。結構おだて上手な先生で、なんとなくイラストのお墨付きをもらったので、まあ、札幌に行っても大丈夫なんじゃないかなぁと思いました。

大:と言うことはイラストレーターになろうと思ったのは高校生の頃ですか?
倉:いや、その頃は「札幌に出れればいいかなぁ」ぐらいの考えでしたね。それよりも、「専門学校に行って落ちこぼれないようにしないとなぁ」なんてことの方が気になったりしてました。専門学校でもプロでやるかどうかはそんなに意識しなかったです。就職活動もあんまりしなかったし卒業制作を普通に作り終わって特に就職が決らなかったら、バイトでもしようかなと考えていた所に、たまたま来てもいいという会社が見つかったので「ああ、何とかやっていけるかなぁ」と感じていました。

大:個展を開催していると聴いたのですが、詳しく教えて下さい。
倉:個人展を3回、グループ展を1回経験しています。専門学校卒業時にグループ展を開催しました。それが人生始めての個展です。社会人になって25歳の時に初めてソロで個展を開催しました。とにかく、何かやりたくてしょうがなかたんですよね。「チャミーコレクション」っていうキャラクターの作品展で、同じ月に2つの場所で個展を開催しました。その個展もオレはやるぞ!ってつもりで始めたのではなく、個人で制作していた作品がたまってきたのと、作品を見てくれた人たちの評判がけっこう好評だったので「こりゃいけるかなぁ、ちょっとやってみようか」って感じで開催しました。そのころは、まだ自分の名前を出すのがちょっとはずかしくて、正々堂々と名前は出して個展はできなかったですね。自分より絵の上手な人は沢山いる世の中で堂々とオレの個展ですって言うのは照れがあって実名では出せなかったです。28歳くらいの時に「寛之岑」って名前でも個展をしました。今年(2004年)5月に「ノールール」のキリさんと合同展を開催するんですよ。今その作品を現在製作中です。今回30歳を過ぎてようやくというか、作品的にも恥ずかしいものを作っている気はしないですし、そろそろ「名前を出してもいいかなぁ。なんて」というか、これからは真剣に名前を全面に出していこうかなと考えています。
大:デザイン事務所勤務はキツイと聞きますが、実際の実労働時間は?
倉:ははは、どこも同じだと思うけど、太陽出ているうちに仕事が終るコトはあまりないですね。早く帰れる時もあるけど、平均したら、、、(しばらく計算中?)午前0時かな(笑)仕事はなるべくアップダウンを作るようにしています。ポリシーとしてはどんなに遅くなっても、会社に泊らないってのがありますね。移動時間を考えると、泊った方がイイかな?って時でも必ず一度家に帰って一日をリセットしますね。

大:仕事をしながらのオリジナル作品制作というのは大切だと思いますが
  モチベーションのとりかたってありますか?

倉:モチベーションかぁ。モチベーションね。結構なんか漠然と自分はこうなりたいっていう思いが昔からあって、その思いは年を取るたびに変わっていますね。だけれど、ういうイメージは常にもっているから仕事が忙しいからとか、やなクライアントが続いているからとか、日々の状況で創作活動がダメになったりしないように意識しているかな。いち年先を見ている自分と、十年先を見ている自分と、目の前の仕事を見ている自分と、ぐるぐる考えながらなんとなくバランスをとっていると思う。逆に制作から逃避する場合は仕事と全然関係ない人に会うことかな。やっぱり普通の友達だったり家族だったり、あと、ごにょごにょ、、、言いづらい事もあるけど。(笑)
大:「彼女とか?」(笑)
倉:そうね彼女とか。でも彼女は業界人なんだけどねー・・・、やっぱり一番は、「逃避したいという気持ちにならないように心がけるということ!」どんだけ厳しい仕事でも面白い仕事になるよう考えるのが大切ですね。できる範囲でだけど。

大:作品や仕事を紹介してください。
倉:手元にすぐ持ってこれる作品(仕事)が少なくてあまり数がないですが、、、(少し照れ)これは、北海道auさんの仕事です。いまもシリーズが続いていて、ここから顔を出して写メールしましょうってキャンペーンのものですね。最近の作品の一番新しいやつはビックエアーに行くとでかいパネルが貼られているので、そこで見ることが出来ました。もう終っているんですけど。次は札幌ドームの2004年度の卓上カレンダーのイラストです。札幌ドームさんから、空撮したものなどの資料をいただいて、カラーインクで仕上げています。もちろんアナログの手作業作品です。これは、札幌ドームに行くと買えると思います。


大:イラストを描く道具は何を使っているんですか?
倉:間違った線を消さない派なんですよ。ボールペンとかマジックとかサインペンとか、はっきり明確なラインが見える道具が好きです。だから逆に鉛筆で軽く当りをつけるような描き方は苦手ですね。プロになってから5年か6年目からは鉛筆はつかわないですね。形が決まるまで何度も描いたり、新しい紙に透かしたりして線を抜き出したりします。仕上げの作画が、アナログだったらそこからトレースダウンしますし、デジタルだったらスキャナーで取り込んで、イラストレーターでやっぱりトレースしたりしますね。だから使っている道具はデザインを考えるときも、イラストのラフを描くときもコンビニで売っている、100円くらいの乾きの良いペンですね(笑)

大:自分の作風に影響を受けた人はいますか?
倉:影響を受けた人とは違うのですが、イラストレーターの若野桂(モシノカツラさんとか結構好きですね。あとは読売ジャイアンツのキャラクターコンペで賞をいただいたことがあって、受賞パーティーに東京に行った時に自分の考え方が少し変わったところがあるので、その時影響をうけたかもしれないですね。

大:なるほど、よかったら授賞式の話しを詳しく聞かせて下さい。
倉:長くなりますよ。(笑)

倉:1999年読売新聞社のキャラクターコンテストで賞をいただいたんですよ。賞を取ったのは27歳の時で、デザイナー暦7年。有る意味慣れっていうのもあると思いますが、結構オレ様な性格だったのでイラストコンペなんて、「出せば取れるぜ!この野郎!」ぐらいすごく調子にのっていた時期でしたね。当然、授賞式にもオレンジ色のズボンを履いて私服で参加。あきらかにその会場を舐めて札幌を出発しました。(笑)ところが会場に付くとオレ以外の人は全員ビジネススーツ着用で、審査委員長の挨拶も最近の若いデザイナーは大きなコンペティションであっても「賞を頂ける」とういう感謝の気持ちよりも「俺様がもらってやる」という感じのクリエイターが増えてきて困りましたねー。という話しが出てきて、「あれぇ〜〜、もしかしてオレのコト?(倉橋心の叫び1)」正直少し動揺しましたね。

倉:授賞式のあと読売の偉い人達やら有名どころの審査員の人たちとお昼を食る時間があって。自由参加の昼食会って聞いていたので、昼メシくらいなら一緒に食べてもいいかなぁと思って参加したんですよ。豪華なお弁当を美味しく食べている途中で司会進行の人が、「受賞された方の制作コンセプトを一人づつ話してもらいましょう?」と言いだして、『えええーーーなにぃーーー聞いてないよーーー(倉橋心の叫び2)』内心ものすごく動揺。次瞬間には目の前のご飯がご飯じゃなくなってしまって、もう何もノドを通らない。無理に食べようと思っても『やっぱりもう無理だ!これ以上食べられない(倉橋心の叫び3)』って状況になってしまって。そもそも作品について考えてなかったオレも悪いンだけど、他の人はちゃんと用意してあったように説明してるし、『何となく作りました!終わりまる(倉橋心の叫び4)』なんてともても言える雰囲気じゃないし。

倉:とにかく自分の順番がくる前に頭の中でキーワードを2、3個考えてたんだけど、オレの作ったキャラクターのプラカードを持った人が後ろに立った瞬間に、ボッと頭真っ白になって「えーーとこれはですねぇ。(ど、どうしようぅ!(倉橋心の叫び5)」とシドロモドロになっていた時に審査委員長の福田茂雄さんが、助け船を出してくれたんだよね。あきらかに会場が凍りついたムードがまた楽しい昼食会にもどって、さらに言えば、読売の社長さんが福田さんをすごく信頼しているのが感じれたんだよね。業界トップクラスのデザイナーからはオーラが見えたね。とにかくスゴイなぁと、悔しいけど負けたなぁと、、、いや、負けるのは当たり前なんだけど、その時に、作ったあとのプラスαの表現力みたいなものがいかに大事かということが、嫌になるほどよくわかった。デザイナーとは作るだけじゃなくてトータル的にモノを考える姿勢だったり、風景みて敏感に感じる感覚だったり、プレゼンテーションテクニックだったり、お客さまとの打ちあわせだったり。ただ机にむかって作るだけがデザイナーの仕事じゃないんだってコトが感覚的によく解った受賞式だったですね。

大:そんな経験からみんなに伝えることがあるとすれば何ですか?
倉:なんだろうなぁ、「単純に技術を磨くだけが向上じゃない」という考え。作品をただ一生懸命に作っても、それがどんだけ良いものかということを他人に説明する力がないと無意味なんだと言うことかな。それを説明してくれる人がほかにいるならいいけど、もしいないなら自分でアピールしなきゃいけないじゃない? 一人で仕事をしていた時は当然営業がいないので自分で営業したんだけど、唐突にしゃべくりの大切さを感じましたね。

大:作品を作っている時のスタンスってありますか?
倉:創作活動中に音楽はスゴイ大事です。無音の空間で作業するのは最後の最後ですね。アイデアを考えるときは音楽がある方がいいです。日本語の曲だと歌っちゃうんで洋楽を聞くことが多いですね。最近のお気に入りは「のんびりなレゲエの曲」をかけています。仕事で絵を描くときは、色々なタッチの絵を描分けなくてはいけないので、描くイラストに合わせて、聴く音楽を変えたりイラストに必要なものを目に入れるようにしていますね。時には、こういうイラスト(そばにあったイラストを手にとりながら)が得意だとか、こういう絵を専門に描いている作家の気持ちになるように、テンションを合わせるというか、、、なんだか、おおげさだけど、そういう気持ちに近づくようにテンションを持っていくことが必要かな。

大:フリーで仕事を始める時期をきめていますか?
倉:正確な時期はきめていませんが、イラストレーターとしてピンでやっていく方が良いのか、イラスト制作可能なプロダクションにするのか悩みますね。仕事を自宅に持ち込みたくないタイプなので、事務所を借りて仕事したいです。オレは正直言うと一人だと仕事ができないんですよ。考えるコトや作ることコトはそこそこ大丈夫なんですけど、他の部分がすごく欠落していると思うのでそれをサポートしてくれるバランスの良い人がそばに必要かなと・・・。ほかに、自分が感じないことを感じれる人や、テキパキ作業をこなせるスタッフがいる事が理想ですね。ようは寂しがり屋ですね。

大:使用している携帯会社はauですか?
倉:携帯電話はボーダフォンを使っています。auさんごめんなさい。(笑)

大:現在のMYブームはなんですか?
倉:足裏マッサージの健康器具に凝っています。ローラー型の器械があるんだけど、何もしない時はそれにどかっと座って、足をゴロゴロさせてリラックスします。足の裏はオレの弱点でもあり大好きなところでもあります。今はもう無くてはならない大切なアイテムになっています。

大:最後に、メニカラの中で好きな作品ありますか?
倉:その質問は前回もありましたよね。同じ質問がくるかな?と思って、今朝ホームページをチェックしてきました。(笑)前回のクリエイターmihoさんをすごくすばらしいと言うと、単なるキャッチボールになってしまうのであえて違う人を紹介しようと思います。彼もプロでお仕事している方なんだけれど、MANBさんはちょっと突出しているなと思いました。特に僕ができない分野なので、2003年末のメニカラ忘年会お話した時に、新年用の3DCGアニメーションの「サルマトリックス」のムービーを見せてもらって、とにかくすごいなぁと。

大:他に気になる作品ありますか?
倉:そうですね、磯谷普美さんもスゴイですね。特に彼女のイラストは原画を見てその恐ろしさを感じました。ポストカードでキャラクターや作風を見たときはソフトタッチで面白い絵を描く人だなと、感じていたのですが、2003の夏にアンジュで開催された「めにから展示即売展」の時に、展示されている原画を初めて見て、すごいびっくりしました。スゴイ細かな作業で作りだされたタッチだったんだなぁということに初めて気がつきました。大きい作品も是非作って欲しいですね。最期に、僕の描くイラストとはジャンルが少し違うんですけど、NTノア42.a-fさんのイラストも好きですね。ひとつの世界がまっすぐに表現されていて、個性的でいいですね。

負けられませんね。まあ、負けないけどね。負けてないっていうか、負けてても負けを認めないもんね。

大:今日は忙しいところ長時間ありがとうございました。
倉:いえいえ、なんか、もっとイイ話しをしようと思ったのに、疲れているから負けないとかいって話し終ってるし、もしかして失敗した?(笑)こちらこそありがとうございました。メニカラも頑張って下さい。

最後に今回、取材に使わせていただいたお店、東区にある飲食店「角高(かくたか)」さん



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